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勤務中のわいせつ行為で停職となった公務員が市を提訴「処分が重すぎる」 最高裁で”逆転”敗訴

今回は驚きのニュースがあったのでちょっと詳しく調べてみました。

勤務中にコンビニ店員の女の子の胸を触ったという事件です。

警察に逮捕はされていませんし、損害賠償請求もされていないようですから
個人的には処分が軽すぎると思うのですが、そうではないと考える裁判官がそれなりにいるということです。

 

事件の概要を時系列で

 

まずは簡単に事件の概要を抑えておきます。

 

勤務中にコンビニを利用して、女性従業員の胸を触るなどのワイセツ行為

コンビニオーナーから雇用主である加古川市に通報

地元新聞に事件が掲載されて謝罪会見

停職6か月の処分

処分が重すぎるとして加古川市を提訴

地裁と高裁でセクハラ男性が勝訴

最高裁で加古川市の処分妥当として、セクハラ男性が逆転敗訴

 

時系列としては、以上のような感じです。

 

 

処分が軽すぎる

 

この事件の感想としては

「え!!停職だけ!?クビちゃうの!?」

と思いました。

 

勤務中にコンビニの女の子の胸を触って通報があって、記者会見開いて謝る必要があったのに、
クビにはならないんですね。

 

公務員の地位はすごく守られています。

 

地裁と高裁でセクハラ男性勝訴の恐怖

 

これは本当に怖いことだと思うんですが、

地裁と高裁ではセクハラ男性が勝訴してるんですよ。

 

この事件で停職6ヶ月の処分が重すぎると考える裁判官が結構たくさんいるということです。

 

神戸地裁の裁判資料を見ると裁判官は3名の名前が書かれています。

 

高裁の方が人数少ないことはないと思うので、

少なくとも6名の裁判官は処分が重すぎると考えたことになります。

 

今回の最高裁の判断が今後の基準となって欲しいところです。

 

私の感覚では「普通クビやろ」と思うんですけどねぇ。

 

具体的に裁判資料に「胸を触る」って書いているんですよ。

 

 

最高裁の判断は極めて妥当

 

今回の最高裁判断は日本の裁判に良心があることを知らせてくれるものでした。

地裁と高裁での判決理由を真っ当な理由で潰していって妥当な結論を導きだしています。

 

判決書は非常に読みにくいので、ここにまとめてみます。

 

認定した事実

判決中で被上告人と書いているのは上告された人、つまりセクハラ男性のことですが、あんまり分かりやすい表現ではないのでA氏としておきます。

 

A氏は平成22年頃から,勤務時間中,加古川市の市章の付いた作業着である制服を着用して,兵庫県加古川市に所在するコンビニエンスストア(以下「本件店舗」という。)を頻繁に利用するようになった。

その利用の際,被上告人は,本件店舗の女性従業員らを不快にさせる不適切な言動をしており,これを理由の一つとして退職した女性従業員もいた。

A氏は,勤務時間中である平成26年9月30日午後2時30分頃,上記制服を着用して本件店舗を訪れ,顔見知りであった女性従業員(以下「本件従業員」という。)に飲物を買い与えようとして,自らの左手を本件従業員の右手首に絡めるようにしてショーケースの前まで連れて行き,そこで商品を選ばせた上で,自らの右腕を本件従業員の左腕に絡めて歩き始め,その後間もなく,自らの右手で本件従業員の左手首をつかんで引き寄せ,その指先を制服の上から自らの股間に軽く触れさせた。本件従業員は,被上告人の手を振りほどき,本件店舗の奥に逃げ込んだ。

本件店舗のオーナーは,前同日,A氏が所属する上告人の部署に宛てて,A氏の前記の行為について申告するメールを送信し,A氏の上司は,平成26年10月7日,本件店舗を訪れてオーナーから事情を聴くなどして,上記行為について確認した。

平成26年11月7日の神戸新聞に,加古川市の職員(氏名は伏せられていた。)が勤務時間中にコンビニエンスストアでセクシュアル・ハラスメントをしたが,加古川市においては店側の意向を理由に職員の処分を見送っている旨の記事が掲載された。これを受けて,加古川市は記者会見を開き,今後事情聴取をして当該職員に対する処分を検討する旨の方針を表明したところ,同月8日の朝日新聞,毎日新聞,読売新聞及び神戸新聞に,上記記者会見に関する記事が掲載された。

加古川市は,平成26年11月8日以降,関係者から被上告人の前記の行為に関する事情聴取を行った。その際,A氏は,下半身を触らせようという意識はなく,本件従業員の手が下半身に近づきはしたが触れてはいないなどと弁解した。他方,本件従業員は,被上告人の処罰は望んでいないが,同じようなことが起こらないようにしてほしい,これはオーナーも同じである旨を述べた。

加古川市長は,平成26年11月26日付けで,A氏に対し,地公法29条1項1号,3号に基づき,停職6月の懲戒処分(本件処分)をした。その処分説明書には,処分の理由として,「あなたは,平成26年9月30日に勤務時間中に立ち寄ったコンビニエンスストアにおいて,そこで働く女性従業員の手を握って店内を歩行し,当該従業員の手を自らの下半身に接触させようとする行動をとった。」(以下,A氏のこの行動を「行為1」という。),「また,以前より当該コンビニエンスストアの店内において,そこで働く従業員らを不快に思わせる不適切な言動を行っていた。」(以下,A氏のこの言動を「行為2」という。)との記載がある。なお,A氏は,本件処分の直接の対象は行為1であり,行為2は行為1の悪質性を裏付ける事情である旨を主張している。

 

最高裁判決に書いてあるのはこれくらいですが、地方裁判所の判決を読むともう少し書いていることがあります。

以下引用です。

原告は平成22年頃から本件店舗を頻繁に利用するようになった。従業員に対しなれなれしく接し,大きな声で話しかけるほか,店の商品である飲み物等を買い与えることがしばしばある一方で,女性従業員に対し,手を握る,胸を触る,男性の裸の写真を見せる,胸元をのぞき込むといった行動をとることや,「乳硬いのう」「乳小さいのう」「制服の下,何つけとん」「胸が揺れとる。何カップや」といった発言をすることがあった。このような原告の言動を理由の1つとして退職した女性従業員もいた。

 

このほうが行為の悪質性がよく分かりますね。

逮捕されていないことが不思議です。

 

判決理由

裁判所の判決では原審(高等裁判所)が処分不当(停職6ヶ月は重すぎる)とした判決理由4つを順番につぶしていっています。

 

同意があったという評価

高裁までの判決理由①

本件従業員が被上告人と顔見知りであり,被上告人から手や腕を絡められるという身体的接触について渋々ながらも同意していたこと

それに対する最高裁の判断

被上告人と本件従業員はコンビニエンスストアの客と店員の関係にすぎないから,本件従業員が終始笑顔で行動し,被上告人による身体的接触に抵抗を示さなかったとしても,それは,客との間のトラブルを避けるためのものであったとみる余地があり,身体的接触についての同意があったとして,これを被上告人に有利に評価することは相当でない。

笑顔で接客しているから同意があったというのはおかしいということです。

そらそうですね。

 

刑罰対象になっていないこと

高裁までの判決理由②

本件従業員及び本件店舗のオーナーが被上告人の処罰を望まず,そのためもあって被上告人が警察の捜査の対象にもされていないこと

それに対する最高裁の判断

本件従業員及び本件店舗のオーナーが被上告人の処罰を望まないとしても,それは,事情聴取の負担や本件店舗の営業への悪影響等を懸念したことによるものとも解される。

警察が捜査対象にしていないかどうかが懲戒処分の重さに関係ないと思いますが

「加古川市職員の懲戒処分に関する指針」

のなかで”刑事処分の程度等”が考慮されることになっているんですね。

 

最高裁の判断はきわめて常識的です。

娘がいる父親としては逮捕して欲しいです。

 

常習性があるかどうか

高裁までの判決理由③

被上告人が常習として行為1(※平成26年9月30日に勤務時間中に立ち寄ったコンビニエンスストアにおいて,そこで働く女性従業員の手を握って店内を歩行し,当該従業員の手を自らの下半身に接触させようとする行動をとった)と同様の行為をしていたとまでは認められないこと

※印部分は筆者追記

それに対する最高裁の判断

行為1のように身体的接触を伴うかどうかはともかく,被上告人が以前から本件店舗の従業員らを不快に思わせる不適切な言動をしており(行為2),これを理由の一つとして退職した女性従業員もいたことは,本件処分の量定を決定するに当たり軽視することができない事情というべきである。

行為2というのは「以前より当該コンビニエンスストアの店内において,そこで働く従業員らを不快に思わせる不適切な言動を行っていた。」というものです。

 

上に記載したとおり、神戸地裁で

原告は平成22年頃から本件店舗を頻繁に利用するようになった。従業員に対しなれなれしく接し,大きな声で話しかけるほか,店の商品である飲み物等を買い与えることがしばしばある一方で,女性従業員に対し,手を握る,胸を触る男性の裸の写真を見せる,胸元をのぞき込むといった行動をとることや,「乳硬いのう」「乳小さいのう」「制服の下,何つけとん」「胸が揺れとる。何カップや」といった発言をすることがあった。このような原告の言動を理由の1つとして退職した女性従業員もいた。

という事実が認定されているんです。

事実認定を軽視できないのは当然のことですね。

 

社会的影響が大きいかどうか

高裁までの判決理由④

行為1(※平成26年9月30日に勤務時間中に立ち寄ったコンビニエンスストアにおいて,そこで働く女性従業員の手を握って店内を歩行し,当該従業員の手を自らの下半身に接触させようとする行動をとった)が社会に与えた影響が大きいとはいえないこと

※印部分は筆者追記

それに対する最高裁の判断

行為1が勤務時間中に制服を着用してされたものである上,複数の新聞で報道され,上告人において記者会見も行われたことからすると,行為1により,上告人の公務一般に対する住民の信頼が大きく損なわれたというべきであり,社会に与えた影響は決して小さいものということはできない。

かなり控えめな表現ですが、その通りです。

 

以上、このようにして停職処分が重すぎることはない、という結論を出しています。

(正確には加古川市の裁量の範囲内であるという結論です。)

 

女性の敵は男性だけではないという話

 

一般に女性の敵は男性であるというイメージがあります。

でも実は女性の敵は男性だけではないようです。

 

今回の判決を書いた神戸地方裁判所(停職6ヶ月は重過ぎるというはんけけを出した)の裁判官の中にも女性の名前があります。

 

少し話はずれますが、女性の敵は女性である場合が指摘されています。

鈴木大介氏の著作の中に

僕が取材をしてきた社会的弱者の女性にとって最大の敵は、実は「苦労せずとも社会に適合できている女性ら」だった

というものがあります。

 

人間はどうしても自分が出来ることは他人にとっても簡単に出来るように思ってしまうところがあります。

 

女性同士であれば理解できると言うものではないようです。

 

下記の本は発達障害当事者としても興味深い本なので一度読んでみてください。


されど愛しきお妻様 「大人の発達障害」の妻と「脳が壊れた」僕の18年間
 

まとめ

被害者が処罰を望んでいないからといって加害者を優遇してあげる必要なんか微塵もありません。

処罰を求めないのは、被害者が事件を思い出したくないとか、捜査や裁判の負担を考えると大変だから、という理由が大半では無いでしょうか?
それなのに、加害者に甘いから何度も繰り返してしまう人がいるんです。

クビにしなかったことで処分が軽すぎて不当だという判決が欲しかったくらいですね。

以上、最後まで読んでいただいてありがとうございました。

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